年末年始に帰省する人の心の内は実に多様でしょう。
嬉しさだけしか無いという人のほうが稀で、成人した大人たちにとっての帰省というものは実に複雑な心境であるわけです。
年老いて記憶も曖昧になっていく父や母、美味しく懐かしい料理に舌鼓をうつ一方で、これだけの荷物を今後どうしていくつもりなのだろうかと何もかもが上の空になる瞬間もある。
孤独死や空き家が社会問題となっている現実社会のなかで、決して自分たち家族も他人事ではないことを身にしみて感じる帰省にもなるわけです。
そんなことで、今回は『週刊文春』2018年12月27日号から、「実家の難題を解決するための最新20箇条」というものをご紹介します。
実家の片づけ 最新20箇条
〜片づけ〜
1 親が元気なうちに片づけをしたいが何から手をつけてよいかわからない
対処方法
「親も子も残したい者」「親は残したいが子は捨てたい物」「親は捨てたいが子は残したい物」「親も子も捨てたい物」の4つに分類。まずは親も子も捨てたいものをすぐに処分。
2 床や廊下、タンスの上などにも物がぎっしり
対処方法
足元や高い所にある物は「転んだら危ない」「地震が来たら落ちる」と伝えて納得してもらう。
3 着ることのない着物、背広など、不要に思える物が押入れを占領
対処方法
子が「要らない物」と断定するのは揉める原因。「形見」として残すための「お気に入り」を聞くに留める。
4 来客用に置いていた布団、食器の山はどうすればいい?
対処方法
年末年始は「最大来客数」把握のチャンス。昔に比べて減った来客数に合わせて処分を。
5 古いアルバム。想い出が詰まっているが、総てを持ち帰るのは不可能。
対処方法
親が好きなアルバムがあるはずなので聞いておく。逆に子から見て、親と知らない人が写った写真は死後、処分しやすい。
6 捨てるかどうか迷った時は?一時保管しておくべき?
対処方法
今は使っていない子ども部屋を一時保管用に使う。もったいない世代の親を安心させ、半年間使わなければ処分を検討。
7 親自身も忘れている財産、負債がないかチェックしたい。
対処方法
「最近貸金庫を使い始めた」などと話題を振って記憶を引き出す。銀行から送られてくるカレンダーや記念品もチェック。
〜リフォーム〜
8 親の家は段差だらけで手すりをつけたい。洋式トイレに変えたい。
対処方法
介護保険で20万円まで「住宅改修費」が支給される。ただ、リフォーム着工後の申請はできないので要注意!
9 老人ホームの入居日や介護費をまかなうため、実家売却でお金を作りたい。
対処方法
売却には半年や1年の単位で時間を要するケースも多く、入居に備えて早めに地元の不動産屋に相談しておく。
〜孤独死〜
10 離れた実家に高齢の親が一人で住んでいる。孤独死が心配。
対処方法
2,3日に一度は電話やメールをし、たまに実家を訪問する。ゴミが多かったり、水回りが汚くなっていれば認知症を疑う。
11 親が孤独死した場合、その後の手続は?
対処方法
近隣住民が発見することが多い。警察が事件性がないか現場検証し、遺族に連絡。DNA鑑定を行う場合も。警察で「死体検案書」をもらい役所に死亡届を提出。
12 孤独死後の実家を元通りにするには、どのくらいの費用がかかる?
対処方法
特殊清掃業者に依頼。畳やフローリングで亡くなった場合、体液が染み込んで高額に。死後3ヶ月が経過していれば30万円を超えることも。
〜空き家〜
13 実家に溜まった遺品の整理・処分は業者に頼むべき? 費用は?
対処方法
一戸建ての場合、個人ではまず不可能なので、見積もりの根拠を細かく説明できる業者に依頼。3LDKで、処分費用も含めて30〜40万円ほど。
14 想い出もあり、遺品整理も面倒。そのままにしておきたい。
対処方法
預金通帳や保険証券が出てくることが多い。生命保険は死後3年、国債は満期から10年で時効。借用書などが見つかっても、死後3か月過ぎていれば相続放棄できないため、遺品整理は不可欠。
15 将来、住むかもしれないので、賃貸物件にして家賃収入を稼ぎたい。
対処方法
リフォーム代に何百万円もかかったり、雨漏りや給湯器を貸主責任で修繕しないといけない。築年数が古い場合、売却が無難。
16 売却する際の不動産業者は地元か大手か?
対処方法
地元に密着した不動産業者は、持ち主や街のことを考えてくれる。大手不動産業者の支店だと情報共有されず、安値で売却されることも。
〜墓移し〜
17 先祖代々の墓を自宅近くに移したいが、トラブルを起こしたくない。
対処方法
墓を守ってくれた親族にお金を渡す。寺を離れる際もお布施を包むべき(10万円程度)だが、法外な離檀料を求められた場合は拒否してもかまわない。
18 墓を移す費用は見当がつかない。どのくらい用意しておくべき?
対処方法
墓石解体費用は1㎡あたり10万円、更地にする費用は20〜30万円。新しい墓は土地使用料など含め計200万円弱、納骨方式だと約100万円。
19 新しい墓を選ぶ時の注意点は?人気の「マンション型」でも良い?
対処方法
多くの霊園は宗派は問われないが、自身の宗派があれば事前にチェック。マンション型は運営を民間に委ねており、破綻リスクも。
20 役所などへの届け出は必要?
対処方法
移転先から「受入証明書」、今の墓地から「埋葬証明書」を発行してもらい、役所に改装申請を提出。「改装許可証」が発行され、移転先に提出して完了。石材業者が代行してくれることも。
−−−−−−−−−−−−以上です。
どれひとつをとっても簡単なものはないですが、であればこそ老齢の親が元気なうちにしておきたいこともあります。
人が死なないなら、片付けるという作業も必要ないかもしれない。
でも、人は死にます。それも必ず、例外なく。
そうとなれば、避けては通れないものに向き合うしかありません。
そしてそのチャンスは「いつでもいい」ことはなく、「親が生存しているとき」それも「意識がしっかりしているとき」でなければ意味がないのだとすれば、あなたにとっての最良の時期に決意して話し合う必要があるでしょう。
今回の記事では、孤独死の場合、その後の墓移しについても触れています。わかっているようで、実は具体的なことは何一つわかっていなかったことに気づいた方も多いはず。
相手あってのことばかりなので、家族が自然に集まる年末年始は絶好の機会となります。
デリケートな事柄ばかりなので億劫になりますが、億劫になったからといって放置できる問題じゃないこともたしか。
やれるうちに、やらなければいけないことを一つ一つ解決していくことは、きっと今よりは明るい未来を迎えられると信じて行うことが大事です。
(出典:週刊文春 2018年12月27日号)