二人に一人がガンで亡くなる時代。
心の底から他人事ではないと感じる方も多いでしょう。
先日も「ちびまるこちゃん」でお馴染みのさくらももこさんが53歳の若さで亡くなりました。
芸能界だけでも次から次にガンで旅立った人々ばかりという印象です。
治療は人それぞれ。
西洋医学を選ぶ人もいれば、民間療法を選ぶ人もいるし、その両方という人も。
たくさんある「民間療法」ですが、その中でも信用出来るものは何なのか。
医師たちが「医学的根拠(エビデンス)」の観点から評価した、という記事が『週刊ポスト』(2018年9月21/28日号)に紹介されていました。
総合内科専門医で民間療法の現状に詳しい秋津医院院長の秋津医師と、新潟大学名誉教授の岡田正彦医師が医学的観点から「それぞれの民間療法を★0〜5つで評価しています。
★★★★★
鍼灸
米国が認めた「痛み」「吐き気」への効能
最も評価が高かったのが鍼灸(はりきゅう)。
「腰痛や花粉症、胃痛などに効果があることが明らかになってきています。他の症状についても効果がないか、現在も検証が進んでいます」
(秋津医師)
がんに対する治療効果は認められていないが、「抗がん剤治療の副作用である吐き気の軽減」や「がんの疼痛緩和」に効果があると、アメリカ国立衛生研究所が認めている。
ガン代替療法を考えるうえでは「がんの治療」と「がんによる痛みの緩和」を分けて考える必要がある。
★★★★☆
漢方
自己判断での服用には要注意!
一般の病院でも漢方を処方されることが増えてきている。
「インフルエンザや風邪の症状を緩和させる可能性が指摘されるなど、エビデンスが増えつつあります。04年の福岡大学の研究では『補中益気湯』という漢方は、抗がん剤の副作用を軽減すると結論づけています」
(秋津医師)
それでも★5つに届かない理由を秋津医師はこう語っています。
「漢方は種類が膨大で、エビデンスが存在しないものも多い。医師から処方される分には問題ないが、ドラッグストアで売られているものを自己判断で使うべきではないと考えます」
★★★☆☆
湯治(温泉療法)
エビデンスはないが”経験則”
温泉に必ず張り出されている「効能」は、2014年に環境省が定めた基準に則しているが、医学的根拠に基づいたお墨付きというわけではない。
「有効成分によって神経痛や胃痛などに効果があるとされていますが、これkらはあくまで”経験則”に基づくものです。ただ、含有成分にかかわらず、温泉に入ることでリラックスでき、自律神経の調子が整えられるといった効果は認められています」
(秋津医師)
がん予防やがん治療については
「因果関係はまったく証明されていない」(岡田医師)
とのこと。
★★☆☆☆
カイロプラクティック
施術者によってバラツキが大きい
ギリシャ語で「カイロ」は「手」、「プラクティック」は「技術」を意味するとおり、骨の歪みを指圧などの手技によって矯正し、症状を改善する民間療法で、1895年にアメリカで生まれたとされる。
「腰や膝が居たい人を対象に調査した結果、効果があったという報告もあれば、確認されなかったとの報告もある。施術者の技術に左右されるため、検証が難しいようです」(岡田医師)
★☆☆☆☆
ハーブ療法
リラックス効果はあるが…
ヨーロッパでは古くから「有用植物」として活用されてきたハーブ。料理の香りづけや保存料として使われたり、防臭・防腐・防虫に利用されたりするなど、使徒は幅広い。
民間療法としてはお茶として飲む以外に、サプリメントとして摂取したりアロマテラピーにも活用されている。しかし、
「香りによるリラックス効果はあるにしても、疾患の治療や予防に関するエビデンスはありません。認知機能を改善すると長く謳われてきた『イチョウの葉』も、米ピッツバーグ大学の08年の研究で、認知症の予防効果が否定されている」
(岡田医師)
★なし
水素水
抗酸化作用のデータはない
水素研究の論文は世界で数多く発表されてきたが「水素水」としての効果・効能は確認されていない。
国立健康・栄養研究所も「有効性を信頼できるデータがない」と発表。
「”水素が体内の活性酸素を無害化する”と主張する人がいるのは承知していますが、それを言ったら水道水にだって水素原子は含まれている。そもそも胃酸に含まれる水素のほうがはるかに濃度が濃いので、外から水素水を摂取しても体への影響はないでしょう」(秋津医師)
★なし
ホメオパシー
薄めすぎて”ほとんど水”
病気を引き起こすとされる植物や動物組織などを水で薄めたのち、砂糖で固めて丸薬(レメディー)にし、服用することでその病気を治療する「ホメオパシー」。
18世紀末にドイツで確立された民間療法だが、近年、風邪からがんまで、さまざまな病気の治療に効果があるとして、アメリカを中心に大流行したが、10年に日本学術会議がホメオパシーの治療効果を科学的に否定。
日本医師会と日本医学会もそれに全面的に同意している。
「ホメオパシーでは原材料となる成分を『10の60乗分の1』にまで希釈して使いますが、これは”地球上のすべての海水の中に1滴たらした”よりもさらに薄めた状態。つまり、ほとんど水なので、どの疾患にも効くはずがありません」
(秋津医師)
アメリカ食品医薬品局(FDA)も、17年にホメオパシー関連製品を取り締まる方針を発表している。
★なし
臍帯血療法
感染症や拒否反応の危険
白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫など血液疾患の治療に臍帯血を利用するのが、臍帯血療法である。
「白血病や再生不良性貧血など重い血液の病気についてはエビデンスがあり保険も適用される」(秋津医師)
しかし、血液以外の病気に対する治療効果は認められていない。
「そもそも他人の細胞なので、人体からすれば”異物”。輸血同様に感染や拒否反応が起こるリスクもある」(秋津医師)
★なし
ゲルマニウム
食品もブレスレットも効果なし
1970年代に大ブームとなるが、中毒症状などが報告され沈静化したゲルマニウム。
しかし近年の健康ブームの中で再注目されている。
「ゲルマニウムが体内の酸素循環を活性化させ、万病を癒す」というのが謳い文句だが、秋津医師は語る。
「ミネラル欠乏には効くかもしれませんが、他の疾患や症状には無関係。経口摂取しても、(ブレスレットなどで)肌に触れさせても効果があるはずがなく、リスクのほうが高い」(秋津医師)
国立健康・栄養研究所も、食品としてのゲルマニウムの有効性を示すデータは「見当たらない」とし、それどころか「(中毒症状などで)生死に関わる副作用が出る可能性が否定できない」と指摘。
★なし
ビタミンC点滴
”がんに効く”前に尿で出る
ビタミンCには抗酸化作用があることから、それを点滴で大量に摂取することで「がん治療に効果がある」とするクリニックもある。
しかし、評価は★ゼロ。
「そもそもエビデンスが存在しない。さらに言えば、ビタミンCは水溶性なので、大量に摂取しても尿中に排出される。点滴でも口からでも違いはありません。ちなみに風邪についても予防や症状緩和につながるという確実な証拠は見つかっていない」(秋津医師)
★☆☆☆☆
断食
週1を超えると栄養不足の危険
食事を断ったり減らしたりして消化器の活動を抑えることにより、体内の毒素を排出(デトックス)して便秘の解消やアレルギーの改善をはかる断食。1週間以上続ける本格的なものから、1日だけの「プチ断食」など実践方法もさまざま。
秋津医師いわく、
「医師やトレーナーの指導の下で行なうのなら、高脂血症や高血圧、高尿酸血症などメタボ関連の疾患に効果があるとされている」
とのことだが、一方で岡田医師は、
「生体のリズムは休むことなく続くものなので、そもそも断食して休める必要はありません。週に1日程度のプチ断食なら許容範囲ですが、それ以上の断食には栄養不足などのリスクが伴います」
と語る。
以上となります。
話にはよく聞くけれども、実際どんな根拠に基づくものなのか、そもそも医学的根拠があるのかというと心もとないものが多いですね。
ふんわりした情報に流されることなく、しっかりその効果、信頼性を確かめることが重要です。
(出典・引用元:『週刊ポスト』2018年9月21日/28日)