もしあなたが受けている医療がまったく科学的根拠がないものだったら!?
お金も時間も体力も、それにともなう感情の起伏も何もかも、とても無駄に浪費したように感じますよね。
今、過剰な医療を見直す動きが世界的な潮流になっているのだといいます。
2018年5月26日号の『週刊東洋経済』では医療経済ジャーナリスト室井一辰氏の協力を得て、日本の医療でもよく行われている無駄な医療のリスト60項目をピックアップしてくれました。
以下にご紹介致します。
受けたくない無駄な医療60項目
検査・検診
1.健常者に胸部X線検査
たんや肺組織の以上など、胸部の問題が特定できたときに限るべき。治療方針への影響はまれ
2.軽度頭部外傷でのCT検査
放射線被曝リスクがあるので、頭蓋骨骨折や脳出血など高リスクの症状に限って実施すべき
3.健常者にPET検査やCT検査のがん検診
健康な人でがんが見つかる可能性が極端に低く、無用な放射線被曝のリスクもある
がん
4.前立腺がんで安易に「PSA検査」
前立線がんは進行が遅いため有害性は低く、検査が過剰な診断を招く
5.低リスクの前立腺がんで安易に治療
前立腺がんは殆ど命にかかわらない段階で見つかることが多い。経過観察し、進行が見られなければ手術は必要ない
6.早期乳がんで骨への転移検査
PET、CTなど骨転移検査の画像診断は進行がんでは有効だが、転移リスクが低い早期乳がんでは効果が薄い
7.乳がんの疑いの段階で手術
がんの疑いがあっても針生検で悪性でないとわかれば、切除手術は避けられる
8.転移のある乳がんに複数の薬剤
これまでの臨床研究によると、薬をたくさん使ったからといって生存率が高まるわけではない。少ないほうが生活の質も高まる
9.30歳以下に子宮頸がんのHPV検査
30歳以下の場合には、以上が見られても自然と正常化する場合が多く、子宮検査の負担に見合う利益がない
10.健康な女性に卵巣がん検査
若い無症状の女性に卵巣がん検査を実施しても早期発見や死亡率低下につながらないことが知られている
11.早期肺がんで脳転移の画像検査
原発巣が小さいにもかかわらず、いきなり脳に転移する可能性は非常に低い。10%超の確率で「偽陽性」も起こる
12.頻繁な大腸がんの内視鏡検査
高性能の大腸内視鏡を使った検査で発見できなければ、がんのリスクはその後10年間は低いとわかっている
小児科
13.風邪に抗菌薬(抗生物質)
細菌とウィルスは別の病原体。風邪のほとんどはウィルス感染症であり抗菌薬(細菌に効く薬)は効かない
14.熱性けいれんでの画像検査
基本的に熱性けいれんは自然と治る場合が殆どのため、検査は必要なし
15.腹痛でむやみにCT検査
CT検査は放射線に子供をさらすため、将来的ながんの可能性を高める
16.未熟児への定期的な脳MRI検査
MRI検査を定期的に行うメリットのエビデンスがない
17.子供の虫垂炎(盲腸)でCT検査
まずは安価で安全な超音波検査を実施すべきで、それでも明確に診断できないときにCTを検討するべき
糖尿病
18.2型糖尿病で毎日複数回の自己血糖測定
いったん管理目標を達成し測定結果が予測可能となれば、得られるものがない
整形外科
19.腰痛発症後6週刊いないの画像検査
特別な疾患や原因がないなら、画像検査は症状改善につながらない
20.ギックリ腰で真っ先にX線検査
ぎっくり腰(急性腰痛)でも6週刊以内の腰椎の画像診断は改善につながらない
21.腰痛で休養
「休むより動く」が細菌の治療の潮流。腰痛治療として48時間以上横になるメリットは認められていない
22.リウマチで安易にMRI検査
診察や単純X線検査で十分診断可能
23.リウマチにバイオ医薬品
真っ先に使用せず、より安価なメトトレキサートなど非バイオのリウマチ薬を試みてから使うべき
24.グルコサミンやコンドロイチン
変形性ひざ関節症の患者の症状を緩和させる効果はない
産婦人科
25.妊娠満期前の分娩誘発や帝王切開
子供の学習能力障害や病気、死亡のリスクを高める
26.安易な陣痛促進
分娩誘発を行ったがうまくいかず帝王切開になるのは、子宮頸部に好ましくない
消化器科
27.認知症患者への胃ろう
延命効果も、誤嚥性肺炎の予防効果もない。そのうえ、生活の質を高めない
28.胸焼けに安易に制酸薬
制酸薬を減らしたり使用中止したりしたとき、重症化が起こる可能性がある
29.ストレス性胃潰瘍に投薬
医療が原因の肺炎など副作用のリスクが伴う。消化器合併症のリスクがないならば、予防のための投薬は避ける
呼吸器科
30.重症ではない喘息、気管支炎でのX線検査
身体検査や病歴から喘息や気管支炎の診断は十分できる
31.気管支炎の子供に気管支拡張薬
子供への気管支拡張薬の効果はごく限られている
32.在宅酸素療法の長期利用
低酸素状態は急性疾患が治癒すれば改善することが多い
精神科
33.2種類以上の抗精神病薬の併用
効果が不透明な一方、薬物相互作用、医療過誤が増加してしまう
34.不眠症で安易に睡眠検査
睡眠検査(睡眠ポリグラフ検査)は、睡眠障害症状が見られない不眠症の評価のためには通常必要ない
35.不眠症治療で最初から抗精神病薬を処方
効果の有無については見解が分かれており、重度の不安障害である場合のために取っておくべき
脳神経科
36.市販の頭痛薬の長期使用
副作用がないものであればよいが、モノによっては長期頻回使用が逆に薬剤乱用頭痛や肝臓の損傷につながる
37.頭痛で脳波測定
頭痛診断では医師の診察が脳は測定に勝る
38.1回の失神での脳CT・MRI検査
けいれんや神経学的な症状などが出ていない場合は、中枢神経系が関与している可能性は低く、画像検査の効果はない
皮膚科
39.じんましんの診断で安易な検査
慢性じんましんの多くは原因が特定できない。特定の物質に対するアレルギーの病歴がないかぎり不要である
40.つめ水虫での飲み薬使用
飲み薬が必要なのは白癬菌の真菌に感染しているときだが、実は白癬菌に感染していないニセ水虫の場合がかなりある
41.アトピー性皮膚炎での抗菌薬
細菌感染が明確に確認できるときでないと、使用しても効果はない
42.皮膚炎での長期にわたる飲み薬使用、ステロイドの全身投与
長期投与による潜在的な合併症のリスクはメリットを上回る
43.アレルギー検査の際に非特異的lgE検査
特異的lgE検査(食物とアレルギーとの関係を特定する血液検査)と違い、非特異的lgE検査は有効性が証明されていない
眼科
44.眼科疾患の症状がないのに安易に画像検査
症状や兆候がなければ視野検査や眼底検査など画像検査は必要なく、病歴チェックと身体検査で十分
45.子供に眼底検査や眼圧検査など毎年の眼科検診
眼底・眼圧検査を含めた包括的眼科検診は子供には過剰
46.軽いドライアイに涙点プラグ
薬剤治療を優先するべき。手術が必要な涙点プラグは「切り札」として取っておくべき
循環器科
47.心臓画像検査でのむやみな血管造影検査
血管造影検査は通常のCT検査より被曝量がかなり大きい
48.85歳以上の患者にLDLコレステロール薬
85歳以上では、数値を下げるための薬剤は転倒、神経疾患などのリスクが高い
49.植込み型除細動器
除細動器のショックは死亡を結果的に防げない。精神的な苦痛もあり、患者が望まなければ不要
歯科
50.顎関節症の治療での歯冠修復のような外科的処置
顎関節症は進行性があるため、元に戻せない処置を安易にするのは望ましくない
51.古くなった歯冠修復物(詰め物)を安易に取り換える
詰め物によって使用可能期間が異なるため、一律に交換すべきでない
52.子供にフッ素なしの歯磨き粉
フッ素なしの歯磨き粉には虫歯予防効果がない
耳鼻咽喉科
53.軽症の急性副鼻腔炎で画像検査
合併症があるなど重症でなければ意味がない
54.突発性難聴で頭部、脳のCT検査
初期の治療に役立つような有益な情報をCT検査では得られない。MRI検査は原因特定に効果あり
看護
55.尿路カテーテルの安易な留置、維持
カテーテルは使用を減らす・除去することで感染症リスクを減らせる
56.高齢者の寝かせきりや座りっぱなし
入院中に歩行機能を維持すれば早期退院、手術後の早期回復につながる
57.せん妄の症状の高齢者を認知症とすること
せん妄が治療されず高齢者の長期入院につながる
健康・予防
58.治療・予防目的の腸洗浄や発汗促進
腸洗浄や発汗促進の効果のエビデンスはなく、むしろリスクがある
59.がん予防のマルチビタミン、ビタミンE、ベータカロチン摂取
心臓血管疾患やがんの予防に有益とのエビデンスはない
60.ダイエット系・ハーブ系のサプリメント
あくまでもイメージにすぎず、効果がない
いかがでしょうか。
唖然とするものもありますが、納得のものもありますね。
これまで信じてきた健康神話が次々と崩壊していくような最新医療情報が次から次へと出てきて困惑しますが、日進月歩、最新情報を知ることは命に直結するので怠りたくないですね。
洋服1枚選ぶ行為とは違う、命を守るための知識をしっかり蓄えて、病院や医者のいいなりにならぬようにすることが大事かと思います。
後悔のない選択をするためにもかなり参考になる60項目ではないでしょうか。
是非参考にしていきたいと思います。
(出典元:『週刊東洋経済』2018年5月26日号)